兵庫県加古川市にある墓石店の、社長と従業員による音楽ユニット「T&T」が、県内を中心に話題を呼んでいる。
【写真】まさにガテン系! 作業着に頭にタオル巻いてヘルメット&グラサン姿で熱唱 同市内で「お墓の山石」や、イベント&プロモーション会社「山石ピクチャーズ」を経営する山本俊之社長と、同社で働くシンガー・ソングライターのTOZYによる“ガテン系”ユニット。作業着にヘルメット、サングラスという衣装でステージに立つ。 そのいでたちから“出オチ”かと思いきや、歌や合間のトークも含めたパフォーマンスは一級品。TOZYはもともと東京で音楽活動を行っており、2009年にはフジテレビ系の超人気番組「クイズ!ヘキサゴン2」内で誕生したグループ「南明奈のスーパーマイルドセブン」の楽曲「I Believe~夢を叶える魔法の言葉~」「幸せになろう」を作曲するなど活躍していた。 2人でユニットを結成してから約2年。その前は、大人数で「宣伝部隊」としてさまざまなグループを作り、地元のイベントを中心に歌や踊りで街おこしを行ってきたという。山本社長は「田舎町ですから、何か楽しいことずっとやっとったら覚えてくれるやろと。お墓屋さんの名前なんて、みんな覚えない。なんで覚えへんのかというと、興味がないんですよね。楽しいことをすれば、ちょっとずつ興味持ってくれると思って」と、活動を始めたきっかけを語った。 自身が墓石店の営業マンとして働いた経験から、「CMとか、メディアの強さを痛感した」という山本社長。まずは地元の神戸新聞に広告を掲載し、サンテレビで約5分のバラエティー番組を放送した。その結果、認知度は一気にアップ。加えて独特のキャラクターとパフォーマンスが評価され、瞬く間に県外にも評判が広がっていった。 山本社長は「お墓屋さんとか仏壇屋さんとか葬儀屋さんでみんな入りにくいじゃないですか。ちょっとでも楽しいことやって。入りやすい会社作りというのはしようかなと思って」と説明。「毎日のように会社に来てくれる。喫茶店に行くような感覚で遊びに来てくれるんです。そしてSNSにいろいろ書いてくれるんですよ。それがどんどん広がって、会社を大きくしてくれてね…。楽しみに来てくれるこの方たちを、ずっと大事にしていこうと思いますね」と笑みを浮かべた。実際に売り上げが「1億数千万上がったこともある」という。 それでも、山本社長の軸足はあくまで“ビジネスマン”にある。「僕はやっぱり商売人なんで、商売でやっていきます。TOZYは歌手なんで、歌手でやっていきます。今やってることが、お互いの先につながったらいい」と言い切った。 その一方で、「アーティストってね、頭が固いんですよ。人と付き合わない。でも、それじゃ絶対に(支持が)広がれへん。やっぱり、いろんな人たちと細かく付き合うことによって、応援してくれるんでね。『俺らは歌いたい、あなたは応援する人』なんて壁はいらないんですよ」と思いを口に。TOZYも「『俺はミュージシャンや』みたいなこと思ってたけど、社長の背中を見て、こんだけ頑張るんや…って思って。それで成果が目に見えるんですよ。それが見えるから僕もそれに感化されて。ミュージシャンで、何もせんとキリギリスみたいになっとったけど、やっぱり努力したら、めちゃめちゃ売れるっていうのは難しいけど、この地域でそうやって生きていけるっていうことは証明しているから」としみじみ語った。 今後に向けて、山本社長は「売れるとか売れへんとか、そんなんは僕の中にはもう全然ない」としつつ、「お墓を建てる人って、家族の誰か亡くなった方なんですよ。その方々を、少しでも楽しい気持ちにしてあげたいなというので始めたのもあるんでね。地域の人とかちょっと明るい気持ちになったらいいな。とか、ほっこりした気持ちになったらいいなとか。生きてる間、みんなと楽しくしたい。それだけ」とほほ笑んだ。TOZYは「ただひたすら、いい歌を書けばいいとか、それが必ず誰かに届くんだって思っとったけど、社会の構造というか、こうなっててことを本当に教えていただいて、一人よがりやったな…みたいなところはありますね」と反省を振り返りつつ、「違うステージというものを見せてもらったというような感じ。大きく社会を見て、音楽はその中の一つなんだっていうことを痛感しました」と言葉に力を込めた。